ICOの真実、ICOは儲かるは本当か?ドルベースとETHベースでROI比較
昨今のICOブームに伴っての投稿シリーズですが、今回は多少思い切ったタイトルになっていますね。
これまでプロジェクト側のICOのメリットやマーケティング的な側面について触れてきました。
さて今回は、気になっている方もいるかと思うICOは金銭的リターンは大きいのか?について書いていきたいと思います。
どの通貨ベースでパフォーマンスを測るのか?
まず重要な観点として、どの通貨建てでリターンが大きいかを考える必要があります。よく何十倍とか何百倍といったように言われることが多いかと思いますが、どの通貨ベースで見た時にそうなっているのかを確認してください。
ICOでは大半が、イーサリアム上のスマートコントラクトを用いてコインおよびトークンが発行されています。その際には、イーサリアムで受け入れることが多いですが、ビットコインや第三者機関を通して法定通貨での受け入れを行う場合もあります。
今回は、これまでのICOの中からいくつかをピックアップし、法定通貨(ドル)ベースでのパフォーマンスとイーサリアムベースでのパフォーマンスを比較してみたいと思います。
今回ピックアップするICOは、以下です。
- Golem(ゴーレム):コンピューティングリソースのP2Pシェアリング
- Gnosis(ノーシス):分散型予測市場
- Melonport(メロンポート):分散型アセットマネジメント
- Singular(シンギュラー):分散型の動画コンテンツプラットフォーム
- Augur(オウガー):オンラインカジノプラットフォーム
ドルベースとイーサリアムベースでのパフォーマンス比較
※ICO価格は、調達額(ドルおよびETH)をICO時に発行したトークンで割り戻して計算しています。
こうしてみると、法定通貨(ドル)ベースでのパフォーマンスは、非常に高いように見えます。Golemで約67倍、Augurで約52倍です。その他のICOもほとんど10倍並とものすごい伸び率です。
しかし、それをETHベースに換算してみると、結果として伸びているのはほとんどGolemだけです。それ以外は、ほとんどがマイナスです。つまり、ICOに参加せずにETHで持っていたほうが得をしたというパターンです。2017年5月中頃からのイーサリアムの急成長に置いていかれたという格好となっています。
現時点でのイーサリアムとその他のプロジェクトとの認知度や普及率の決定的な差が出ているとも言えるでしょう。特に、登場した当初はイーサリアムのキラーアプリとも言われたAugurもマイナス82%という結果です。初期であったがために、イーサリアムのその後の成長との差がより出てしまったとも言えますが。
個人的な見解ですが、過去のICOほど1ETHあたりの発行トークン数が少なかったので、価格割れがその後しやすかったのでしょう。例えば、1ETH=100トークンで発行したとすると、この時点でイーサリアムに対して100分の1の価値を持つことになります。(もちろん発行数の問題などもあるので、厳密には異なりますが。)その価値を本当に維持できるのか?また、ICOするプロジェクトが100を超えてくると必ず値崩れするプロジェクトが出てきてしまいます。そのため、1ETHあたりで付与されるトークン数および発行数は、重要な指標となります。Statusなど最近のICOは、このあたりも現在のイーサリアム価格に併せて調整しているとは思います。
その他にも、プロジェクト運営側の保有比率やロックアップ期間、発行されるコイン・トークンの性質についてもしっかりと吟味が必要です。
今後のICOの見通し
先ほどのデータの通り、ほとんどのプロジェクトが、イーサリアムの肩の上で成長したようなものです。もちろん、イーサリアム自体がDAppsプラットフォームですので、ICO自体がイーサリアムを盛り上げ、そしてイーサリアムがICOやDAppsを盛り上げるというシステムではありますが。
エンタープライズ向けの発表やいくつかの要因によるイーサリアムの高騰により、アーリーアダプター層あたりまでイーサリアムが広がったのではないかと考えています。そのため、ここからの各ICOプロジェクトの成長は、プラットフォームであるイーサリアム自体の成長によいしょされる形ではなく、各プロジェクトの双肩にかかってくるタイミングかと思っています。
そのため、プロジェクト側も慎重にICOを行っていく必要があります。この点については、別途考察しますが、先日アナウンスのあったOmiseGOのICO方針が参考となります。
よって、個人投資家の方々にとっても、もう買えば儲かるなどといった夢物語の時期は終焉に向かっていき、よいプロジェクトとそうではないものを見分けていく必要性が高まっています。もちろん全てのスタートアップが成功する訳ではないのと同様、どれだけよい情報やメンバーが揃っていても泣きを見るパターンはあるでしょう。だとしても、しっかりと情報を吟味し、投資を行い、成長を見守っていくことが重要となります。
ちょっと最後、発散してしまったのでまとめます。
- これまでのICOは、多くが対ETHでは、ROIが悪い
- 今後の伸びは、プロジェクト自身のポテンシャルに委ねられている
- そのため、プロジェクトに対する目利きの重要度が相対的に上がる
- 基軸通貨に対するトークン価格(1ETHあたりの価格)がポイント
- プロジェクトサイドの保有比率やロードマップも要確認
細かい部分は、別途書いていきたいと思います。知りたいことなどありましたら、リクエストお待ちしています。
Startup Timesさんにインタビューを掲載していただきました
Startup Times(スタートアップタイムズ)さんにインタビューを掲載していただきました。
かなり大げさなことを書かれていますが、あくまで記者の方がいっているだけです笑
(※メディアに出るとたいそうな言い回しをされるジンクスがあります。)
今回のインタビューは、以前に学生向けの勉強会を開催する際に、ディップ株式会社さんのオフィスをお借りした際に、おしん記者にお会いしたのがきっかけです。同世代を中心にブロックチェーンについて知ってもらいたいという想いを汲んでくださいました。
イベントなどを企画されている方は、相談してみると良いかもしれません。
プロダクトについてや、ブロックチェーンによって目指す社会についても触れていますので、ご興味ある方は、ぜひご一読いただければと思います。
仮想通貨勉強会「CSG」さん主催のイベントでブロックチェーンのビジネス活用事例についてお話しました
先日は、谷村さんが運営されている仮想通貨勉強会「CSG」さん主催のイベントでブロックチェーンのビジネス活用事例についてお話しました。
司会には、フリーアナウンサーの三木恵さんが務めてくださいました。そんな三木さんのブログは、こちら。
約50人がご参加いただいた今回のイベント。テーマは、ブロックチェーンがどのようなビジネスに活用できるかという点でしたので、ブロックチェーンおよびスマートコントラクトについて簡単なおさらいをした後に、海外でのビジネス活用事例にフォーカスしてお話しました。
ビジネス活用では、朝日新聞から投資を受けたことでも話題となっていたブロックチェーン上での著作権管理「Binded(バインド)」や、文書管理を行う「Factom(ファクトム)」などビットコインブロックチェーンを利用しているものをはじめとして、Hyperledger系のダイヤモンドのサプライチェーンマネジメント「Everledger(エバーレッジャー)」や土地登記管理の「Bitland(ビットランド)」を紹介しました。
スマートコントラクトを利用するものでは、コンテンツ権利管理の「Singular(シンギュラー)」や予測市場の「Augar(オウガー)」や「Gnosis(ノーシス)」などを紹介しました。
その後の質疑応答でも、多くの質問をいただき質問者の方と対話をしながら、ひとつひとつ疑問にお答えしていきました。
私からの講演後は、ピザとビールを片手に懇親会が行われました。ブロックチェーンを活用した事業で起業を考える方や、企業の新規事業担当者の方、監査法人の方など、それぞれ知りたいポイントについて引き続き質問をお受けしたり、雑談を楽しみました。
毎月、私も運営にかかわるミートアップはありますが、今回のように外部の勉強会でも積極的に活動しております。需要のある方は、ぜひお声がけください。
ブロックチェーンのビジネス活用についてのスタディーグループ「ブロックチェーンビジネス研究会」の第5回ミートアップが、6月26日に開催されますので、ご興味ある方はぜひご参加ください。
ICOとは?ICOによるマーケティングの加速とリスク
これまでICOの仕組みおよびICOで発行されるコインやトークンの種類について触れてきました。今回は、ICOをすることによる、スタートアッププロジェクトにとってのマーケティング的な側面のメリットについて考えたいと思います。
さて、ICOのメリットとしては、
- 資金調達
- マーケティング
- PR
と述べました。
今回は、このマーケティングの部分についてさらに詳しく見ていきたいと思います。
スタートアップのマーケティングを加速するICOとは
マーケティングの観点では、初期にユーザーを獲得できる点と、熱量の高いフォロワーをゲットできるという点があります。
ICOにおいて特徴的なのは、この後者の熱量の高いフォロワーを獲得できる点でしょう。ICO自体は、あくまでもクラウドファンディングの一形態です。もちろん、スマートコントラクトを用いたICOには、従来に比べて大きな技術的優位性は存在しますが、ここでは割愛します。
ICOでは、プロジェクトの発行するコインおよびトークン(以下では、コインに統一します。)を、初期の安い価格で得ることができます。そして、そのプロジェクトが成長すればするほど、その発行されたコインの価値が上昇します。それは、コインの供給量がブロックチェーン上で有限に決定されているからです。
とはいえ、コインの価値が本当に上昇するのか?については、疑問も存在します。それについては、イーサリアム価格とトークンの販売価格の関係性について、別記事で考察したいと思います。
さて、初期にコインを購入した投資家は、そのコインの価格が上昇することでキャピタルゲインが可能となります。
彼らは、自己の利益という観点でもプロジェクトを応援するので、熱量の高いフォロワーとなるわけです。直接的な利害関係によって投資家たちは、プロジェクトの成功と一心同体、一種の共犯関係のような状態となります。
これが、スタートアップにとって、護送船団方式的な役割となります。
彼らは、強力なフォロワーとして、プロジェクトのことを知らない人たちにも宣伝していくでしょうし、プロジェクトの内容について解説するブログを書いたりもするでしょう。これらは、発信力の乏しいスタートアッププロジェクトにとって大きなメリットとなります。こういった点は、既存のVCの在り方とはことなる効果をもたらすと言えるでしょう。
ICOバブルとサブプライムローン
そのため、悪い言い方をすると、プロジェクト自体に価値がないとわかっていても、自分よりも後に参入した投資家に高値で買ってもらうために誇張して伝えていく可能性があります。なぜなら、自分が損したくないからです。これは、過去に不良債権化するのが目に見えていた金融商品を売りつけ過熱し、バブルがはじけるというサブプライムローンを彷彿とさせます。
現在は、ICOを行うプロジェクトについて、詳しく調べないまま購入を行っている投資家も少なくないと考えます。そのため、実体にそぐわないバリエーションを持ってしまったプロジェクトも出てくるでしょう。それは、まさに不良債権を内包した金融商品のようなものです。
そうならないことを心から願うばかりですが。。。
ICOの健全化は、どのように図られるべきか?
ICO自体は、スタートアップエコシステムにとって新たな風であると思っていますし、そうなって欲しいとも思っております。
しかし、ここでも述べたとおり、個人投資家とスタートアッププロジェクトとの新しい関係性を築く一方で、後半で述べたような多大なリスクも内包しています。
ベンチャー投資という魅力的な市場が個人に開かれたことは非常に喜ばしいことですが、スタートアッププロジェクトについての正しい情報と、指標が提示されることが必須と言えるでしょう。おそらく、一度大きなバブルと崩壊を経て、調整が入り、新しい市場としての土台が整っていくと考えます。
また、発行されるコインの性質も様々であるため、全てのコインが同じように評価・取締ができるわけでもありません。そのあたりも、ICOによって投資家にメリットのある形態を模索していく必要があるでしょう。
願わくば、崩壊を向かえたくはないですが、崩壊を向かえても粘り強くこの業界にみなさんが向き合ってくださると日本における業界の早期発展につながっていくと強く思っています。
ブロックチェーンプロジェクトでICOされるコインおよびトークンの種類について
前回は、ICOの全体的な仕組みについて触れました。
今回は、ブロックチェーンプロジェクトのICOにおいて、ブロックチェーン上に発行されるコインおよびトークン*1の種類について考えたいと思います。
その前に、ブロックチェーンプロジェクトについても大きく2つに分けておくと、新たなブロックチェーン自体を構築するものと、既存のブロックチェーンの上にアプリケーションを構築するものに分けることができます。
ネイティブ通貨、サービス内通貨、ロイヤリティトークンの大きく3つに
コインおよびトークンは、以下の3つに大別されると思っています。あくまで個人的な分け方なので必ずしもそうとは限りません。
- ネイティブ通貨(ex. BTC、ETH)
- サービス内通貨(ex. FCT、GNT)
- ロイヤリティトークン(ex. DAO、SNGLS)
もちろん上記の両方に当てはまる性質のものもあります。
1.ネイティブ通貨
ネイティブ通貨とは、ブロックチェーンプロトコル自体の維持のために利用されている暗号通貨(仮想通貨)と定義しています。プロトコルの維持ということは、ブロックチェーンにおいてはコンセンサスアルゴリズムと直結する部分となります。つまりは、マイニングを通して配布される通貨と思っておいていただければ結構だと思います。そのため、ビットコインのBTCやイーサリアムのETHなどがこれにあたります。
基本的には、ブロックチェーンプロトコルの維持という定義をしたのですが、特殊なケースも存在します。Augar(オウガー)のREPです。Augarの場合は、現実世界の情報をブロックチェーン上に適切に反映するという一種のプロトコルを維持するためにREPが利用されています。そのため、ある意味この定義に当てはまるとも言えます。Augarについては、また別記事でも触れたいと思います。
2.サービス内通貨
これはそのままズバリの意味です。新たにローンチされるプロジェクトのサービスを利用する際に、利用料として支払われる通貨のことです。文書記録をビットコインブロックチェーン上に行う「Factom(ファクトム)」におけるFCTや、コンピューティングリソース共有プラットフォーム「Golem(ゴーレム)」におけるGNTなどがこれにあたります。
3.ロイヤリティトークン
最後が、ロイヤリティトークンです。こちらは、プロジェクト内で出た収益をトークンの保有配分に応じて分配する機能を持つようなトークンです。既存の株式の形態に 一番近いといえるかもしれません。基本的に、収益の分配は、スマートコントラクトを用いて行われます。
ハッキング事件などで大きな話題を生んだファンドの自動化を目指す「The DAO(ザ・ダオ)」のDAOトークンやコンテンツ産業における権利流通の効率化を目指す「Singular(シンギュラー)」のSNGLSなどがこれにあたります。
以上、簡単にICOにおけるコインおよびトークンの種類を見ていきました。もちろん、これからも新しい形態は登場していくこととは思います。ICOで発行されるコインの形態によって、投資する意味というのも変わってくるでしょう。
ICOは、多少バズワード化してきてはいますが、正しく運用されれば、非常に良い仕組みです。富の再分配や既存の金融機関が一方的に設定する信用に紐付かない信用創造が可能です。ビジネスとしてご興味のある方は、可能な範囲でお力になりますので、ぜひお声がけください。