ICOの真実、サービス内流通型トークンをICOする意味はあるのか?
ICOの可能性については、個人的にも推進していきたいと思う一方で、ICOを行う際に本当に適切な設計がなされているのかは疑問が残ります。以前の記事でもICOされるトークンの種類などは触れました。
今回は、サービス内流通型トークンについて、考えていきたいと思います。
サービス内流通型トークンの持つ機能
サービス内で流通するトークンの持つ機能は、以下のように整理できるかと思います。
- サービス内で提供される機能の利用のための利用料として支払われる
(Storjのようにファイルストレージを利用するために、専用のトークンを支払うといったパターン。) - 一定量以上を持っていると特別な機能や特典が得られる
(VALUや、Superbloom CapitalのSEEDのようなパターン。) - 何かの権利を証明するもの
(金の保有を証明するDigixや土地の所有権を示すBitlandのようなパターン。) - サービス内の所定のアクションに対する対価として支払われる
(良いブログ投稿をすることで、トークンがもらえるSteem.itのようなパターン。)
上記の機能を複数同時に持つトークンも存在します。
ブロックチェーン上のトークン化するメリット
ブロックチェーンを用いて仮想通貨ないしはトークン化するメリットとして、最初は単一のサービス内だけで流通するとしても、将来的にサービス外でも利用可能にできるというメリットがあります。もちろん、既存の電子マネー(SuicaやBitcashなど)でも可能ですが、従来型よりも効率的に行えます。
その最たる例が、外部の取引所での売買です。その他にも、ERC-20対応のデビットカードなどを通じて決済を行うことができます。つまりは、サービス内で流通する仮想通貨やトークンを現金化できるということです。
これまでサービス内のポイントや仮想通貨の現金化は法的に規制されていました。その一方で、ユーザー側のニーズは高かったので、そういった意味でニーズはあるのでしょう。
しかし、国内においても改正資金決済法の施行により、仮想通貨交換業を行うのにライセンスが必要となったほか、取り扱う仮想通貨およびトークンの種類についても金融庁に申請が必要となったため、なんでもかんでも取引所を介して現金化できるというようにはならないでしょう。
サービス内流通型トークンのICOへ参加するメリットはあるのか?
基本的な参加のメリットとしては、キャピタルゲインか早期に参加することで割安になるというものでしょう。つまりは、トークンあたりの価値が上がる必要があります。そのためには、そのトークンを持っていることで何ができるかの、”何が”の部分の価値が高くなっていく必要があります。
例えば、専用のトークンを支払うことで、ファイルをストレージに預けることができるプロジェクトがあった場合、トークンの価値が上がるためには、そのストレージに預けたいという需要が高まる必要があります。もしくは、特定のトークンを5以上持っていると、特別なコミュニティに参加できるとして、そのコミュニティへの参加の需要が高まるとトークンの価値があがるでしょう。高級クラブの会員権が高額で転売されるのと似たようなものです。
もしくは、そのトークンを手に入れることが困難であれば困難であるほど価値は高まるでしょう。Difficultyが高く一般人はマイニングできなくなったBitcoinのように、一部の人しか手に入れることができない場合も、価格が高騰する可能性があります。
参考になるグラフがこちら。
ふとグラフ作ってみた。ビットコインがバブルかと言われると、difficultyとmarket capが大きく乖離した時はバブルだと思う。採掘コストと価格はバランスするの前提でいうと直近はややバブル気味にも見える。 pic.twitter.com/2EO5xraHq8
— 濱田優貴@メルカリ (@yukihamada) 2017年10月14日
まとめると、プロジェクトの設計として「トークンを持っていることで得られる対価の価値が高まっていく可能性があるか」、「そのトークンを手に入れるのが困難かどうか」に着目するのが良いでしょう。
トークンを持っていることで得られる対価の部分についても、その対価がそのトークン建てで計算されるのか、法定通貨建てで計算されるのかも重要です。トークン建ての場合は、需要に合わせてサービスを受けるための値段が上がっていきますので、ユーザーの利便性とのバランスが懸念されます。法定通貨建てだった場合は、そもそもトークン化する必要性が疑問です。
また、ICOを実施している時点で、Bitcoinなどのようにマイニングを介することなく最初からEthereumなどで交換できるため、比較的手に入れるための困難さは低いといえます。
ここまで、サービス内流通型トークンについて見てきました。実際は、トークンの持つ機能別により詳細に価格決定ロジックが考えられますが、今回は割愛します。
ICOには賛成ですが、適切な設計のものでなければ、そのサービスのユーザーも、ICOに参加する投資家も損をするという結論になり兼ねません。
ICOもしくは既存のサービス内でトークンを活用しようとお考えの方は、ぜひ以下のフォームからご連絡ください。ブロックチェーン上に、よりよいトークンや仮想通貨が増えていくことを願っています。
また、ICOに関するこちらの記事もぜひご参考ください。